
2025年は戦後80年。そして2025年3月22日は、日本でラジオ放送が開始されてから100年となる節目です。
NHK福岡放送局では、この機に合わせて、3月29日に【放送100年福岡発ラジオドラマ「JOLK~戦時下を生きたアナウンサーたち~」】が放送されます。
このドラマでは、第二次世界大戦下の福岡を舞台に、福岡放送局のアナウンサーたちの姿を描きます。
3月9日には、NHK福岡放送局にて公開収録が行なわれており、その際の様子とともに、制作関係者のコメントを紹介。
放送は九州沖縄向けとなりますが、NHKラジオ「らじる★らじる」で全国から聴取可能なほか、関連のテレビ番組もNHKプラスにて全国配信されます。
出演:一橋忠之アナウンサー コメント
▶企画は一橋アナウンサー
日本のラジオ放送開始から100年、そして戦後80年の節目である2025年に、戦争について考える番組を作れないかと企画の提案をしたのが2023 年秋。できる限り実話をベースにしたいと考え資料を探し始めました。しかし、肝心の1941年~1946年の期間の資料は、放送協会が軍の統制下にあったこともあり局内の名簿さえ残っておらず、取材は困難を極めました。それでも数少ない資料と証言から、言いたいことが言えない、伝えたいことが伝えられない当時の福岡放送局のアナウンサーたちの葛藤が見えてきました。
▶自ら演じて
私は東日本大震災の際、東京アナウンス室勤務で発災後には初任地だった盛岡放送局へ応援業務に入りました。ライフラインのほとんどが破壊され、家族や友人と連絡の取れない方々から「伝えて欲しい」とNHK に託された「安否情報」(「私は○○避難所にいる」「あなたを探している」といった情報)を発災当日の夜から寝ずに伝え続けました。
言葉や情報を届けることの重みと、一方であまりにも自分たちにできることがない無力さを実感しました。今回、ドラマの脚本を依頼し、自分自身も役を演じるという初めての経験でしたが、この時の無力感とそれを繰り返さないために何ができるのかという自分の問いも、脚本作り、役作りに投影してきました。
そして、なにより今回参加してくださった高校生の皆さんとも議論を交わす中、たくさん気づきがありました。当時の時代背景や人々の感情を丁寧に捉えて演じてくださった高校生の皆さんの熱演にも、ぜひ耳を傾けていただきたいです。
▶放送に向けて視聴者の皆さんへ
このドラマでは、主人公だけでなく、各アナウンサーのモノローグがあります。当時のアナウンサーたちが、それぞれの考えを持ち、何が正解ということはない状況下で、悩みながら正解を導き出そうとしていた。アナウンサーそれぞれの葛藤を表現したいと、入江信吾さんと話し合い、実現していただきました。 取材をする、情報を届ける、声を届ける、そういった使命感をもって生きた彼らに思いをはせていただいて、「もしもこのとき自分だったら」と一瞬でも考えていただけたらうれしいです。
一橋アナウンサープロフィール
NHK福岡放送局夕方のニュース番組「ロクいち!福岡」のキャスターを担当。
2025年4月からは東京に異動し「首都圏ネットワーク」や「#NHK」を担当。
作:入江信吾さんコメント
お話をいただき、生まれ育った福岡を題材に、自身初のラジオドラマでのオリジナル脚本を書けるということで、「ぜひ、やらせてください」と意気込みました。しかし、音声のみでの表現、戦時下の放送局の資料がなかなか残っておらず取材は困難を極める・・・そういった条件を知るにつれて、難しさを実感していきました。
当時、情報統制によって実施していなかった「空襲警報下における避難情報の放送」を、福岡放送局の局員が軍に嘆願したことで、全国で初めて実施されたと知り驚きました。
戦時下、それぞれの地域にそれぞれのドラマがあったのだなと感じていただければうれしいです。
放送が戦争に加担した事実は疑いようがないでしょう。が、それを後世から一方的に断罪するだけでは不十分で、「もし自分ならどうしていたか?」その想像力こそが重要だと思います。
自分だったらあの巨大な流れに抗えていたのか。おかしいことをおかしいと口に出すことが出来たのか。昨今の危うい世界情勢はまさにそんな空気ではないのか。と。
歴史は繰り返す。だからこそ、当時の人々へ思いを馳せたい。繰り返さぬために。このドラマは意志と祈りの物語です。
入江信吾さんプロフィール
福岡市出身の脚本家。手がけた作品に、ドラマ『相棒』、アニメ『チ。-地球の運動について-』、映画『白夜行』、『なつやすみの巨匠』など。
番組について
この番組は、現在NHK福岡放送局に勤務するアナウンサーたちが、2023年度に放送したNHKスペシャル「アナウンサーたちの戦争」をきっかけに、“福岡ではどうだったのか” 当時福岡放送局で勤務していたアナウンサーなどへの取材、関係者の証言や手記などの資料収集を通して記憶や記録を紡ぎ、ラジオドラマという表現で戦争と放送を見つめる企画です。


脚本を担当した入江信吾さんは、アナウンサーたちに同行し取材に参加。戦時下の様子を丁寧に脚本に落とし込んだ作品となっています。
出演は、NHK 福岡放送局のアナウンサー・出演者らに加え、オーディションで選ばれた福岡県内の高校生の皆さんです。


あらすじ
時間軸としては、主に太平洋戦争の開戦直前から終戦までを描きます
時は戦時下、ラジオが一般家庭にも普及した時代…。アナウンサーは日本軍の快進撃を雄々しく伝え、国民の戦意を高揚させた。その一方で、重要な軍事情報として統制されたのが天気予報だ。台風が接近しても限られた防災情報しか伝えられず、多くの命が失われた。
もどかしさと無力感を抱く福岡放送局のアナウンサーたち。「必要な情報を届けられないのに、自分たちは何のためにいるのか…」戦況は悪化し、ついに福岡県にも空襲警報が発令される。
本当に沈黙を貫くべきか。それとも・・・。
出演者

放送予定
▼放送
100年福岡発ラジオドラマ「JOLK~戦時下を生きたアナウンサーたち~」
2025年3月29日(土)ラジオ第1
九州沖縄地方向け
【前半】
午後8時5分~8時55分
【後半】
午後9時5分~9時55分
NHK のネットラジオ「らじる★らじる」で同時配信・聴き逃し配信
全国放送は未定
▼関連
放送100年 地域特集「ドラマで伝える 福岡のアナウンサーと戦争」
2025年3月29日(土)
NHK総合
九州沖縄地方向け
午前10時15分~10時40分
NHKプラスで見逃し配信
関連企画展
「JOLK~戦時下を生きたアナウンサーたち~」展
▼会期
2025年3月1日(土)~30日(日)
▼会場
NHK福岡放送局
▼内容
ラジオドラマの制作に合わせて、企画展示を実施中。ラジオドラマ脚本制作の過程で参考にした資料に加え、NHK放送博物館(東京都港区愛宕)に所蔵されている、日本の放送の歴史を伝える数々の展示物の中から、ドラマが描いた時代を伝える資料や機器を特別に出張展示。
この情報は2025年3月20日(木)時点での内容です。また、記事の内容は予告なく変更される場合があります。