日本赤十字社(本社:東京都港区)では、2024年1月に北陸地方を襲った「令和6年能登半島地震」において、救護班の派遣などを通じ、被災地支援に取り組んできました。
その後も記憶に新しい宮崎県を中心とした地震が発生したほか、度重なる豪雨や土砂崩れなどの二次的、三次的な複合災害が増えている現在、日赤の一員として市区町村ごとで高齢者の支援活動などを行う「地域赤十字奉仕団」、日頃の訓練を生かして災害発生時に活動する「防災ボランティア」など、全国で約85万人の「赤十字ボランティア」が活動しています。
遠くない将来に発生が懸念される南海トラフ地震では、高層の建物が並び、核家族や独居人口も多い都市部を含む広域が被災地となることも危惧され、自助や共助の重要性が高まります。
こうした背景から、9月1日「防災の日」を前に、国民の防災・減災に関する意識と実態調査を、北海道、宮城、東京、愛知、大阪、広島、福岡の各地域に居住する10代~60代以上の男女、合計1200名を対象に実施。結果を発表しました。
以下、2024年 日赤調べ。
調査結果のハイライト
図1
「防災の日」や「防災週間」をきっかけにして、「防災・減災の取り組みをしたことがある」人は33.6%にとどまった。
図2
取り組みをしたことがある人は「すでにある防災備蓄を見直した(52.4%)」「居住地のハザードマップを確認した(49.1%)」「新しく防災備蓄を始めた(46.2%)」がその内容の上位であった一方、「家族や親族と連絡方法を決めた(24.8%)」や「地域や企業などが主催する防災訓練に参加した(13.2%)」といった周囲とのかかわりに関する回答は少ない傾向であった。
図3
今後「都市の中で災害に遭うかもしれない」と考える機会は、「半年に1回くらいの頻度(26.3%)」「もっと少ない頻度(22.8%)」「考えることはない(15.6%)」をあわせると64.7%となり、意識することが少ない人が半数を超えた。
図4
自分が住む地域で「起きたら怖いと思う災害」は、1位が「地震(82.2%)」となり、「台風(48.3%)」「豪雨や洪水(44.0%)」「津波(33.9%)」「暴風や竜巻(32.7%)」と続いた。
図5
自分が住む地域で「災害が起きたら心配なこと」は、1位が「電気、水道、ガスなどインフラの復旧(58.8%)」であり、「食料や生活備品の確保(49.9%)」「家族の安否(49.3%)」「建物の倒壊(45.8%)」「インターネット、電話回線など通信設備の復旧(37.3%)」と、インフラやコミュニケーションに関する内容に回答が集まった。
図6
過去、気象庁からの緊急地震速報や自治体からの避難指示などが発出された際に、実際に「避難したことがある」人は7.4%にとどまり、78.4%の人は「避難したことがない」状況であることが分かった。
図6下
参考:2023年調査
なお、2023年の調査で同様の質問をした際は、「避難したことがない」と答えた人は78.1%、「避難したことがある」人は10.3%という結果であった。
図7
避難しなかった理由で最も多かったのは「自宅にいた方が安全だと思ったから(30.4%)」、次いで「大した状況ではないと思ったから(26.8%)」や「近隣の人や知人が避難していなかったから(9.9%)」と、自身の解釈や周囲の行動に影響を受けていることがわかる結果となった。
図8
自助の取り組みとして「防災備蓄しているもの」を聞いたところ、「飲料水(61.6%)」が最も多く、「食品(50.8%)」「懐中電灯・ランタンなど簡易照明(41.9%)」が続いたが、それ以外の内容については数値が下がり3割より少ない。
図9
地域で行われている防災訓練や防災に関する催しに「参加したことがある(何度も+一度だけ)」人は合計で23.8%であり、76.3%が「一度も参加したことがない」と回答した。
図10
共助に関する意識を聞いてみると、「都市で災害が発生した際に周囲の人と協力し合える(必ずやる+たぶんやる)」と回答した人はあわせて68.7%と7割に迫る結果であった。
図11
周囲との協力を「やらない(たぶんやらない+全くやらない)」と回答した人の理由は、1位が「自分や家族のことで精いっぱいになるから(41.2%)」であり、次いで「どのように助け合ったり協力したりすればいいかわからないから(17.8%)」「知らない人とは関わりたくないから(13.8%)」という結果であった。
まとめ
今回の調査は、過去の災害を思い出し、防災・減災についての意識や行動を見直すことを趣旨として定められた「防災の日」を前に実施されました。
都市部に住む人々の意識としては、「災害に遭うかもしれない」と考える機会は半数を下回り、緊急地震速報や避難指示が発出されて実際に避難した人は1割にも満たない状況でした。
特に被災した際の「自助」行動は日ごろからの心がけが重要となりますが、防災の日をきっかけに備える行動を起こした人は3割にとどまりました。
またお互いに助け合いながら避難生活を行う「共助」について、地域内での交流にもつながる防災訓練等への参加はなされず、自分自身や家族の安全を守ることで手一杯になってしまう状況も想像されます。
こうした結果から、日赤では、災害に備える防災の取り組み、被災状況を軽減する減災の取り組みのいずれも万全な状態とは言えないように見受けられると語っています。
調査概要
▼調査名
防災の日に関する意識調査(2024年)
▼調査対象
北海道・宮城・東京・愛知・大阪・広島・福岡に居住する男女1200名
10~60代以上の男女各100人
▼調査方法
インターネット調査
▼調査機関
楽天インサイト株式会社
調査委託
▼調査期間
2024年8月6日~12日
この情報は8月30日(金)時点での内容です。また、記事の内容は予告なく変更される場合があります。