2022年2月19日(土)、福岡市中央区の大濠公園能楽堂(福岡市中央区)にて、能楽・喜多流を継承する塩津哲生さん、塩津圭介さんが出演する「第八回塩津能の會(かい) 九州公演」が上演されます。
喜多流は、江戸時代初期に流祖・喜多七太夫長能が打ち立てた能楽の流派で、観世流、宝生(ほうしょう)流、金春(こんぱる)流、金剛流と並ぶ、能楽五流の一つ。福岡藩黒田家の庇護を受けていたことで知られ、会場となる大濠公園能楽堂には、福岡市出身で幕末・明治期の喜多流能楽師である梅津只圓の銅像が置かれています。
そうした喜多流ゆかりの会場で上演される今回の演目は、舞囃子「邯鄲」と能「湯谷」。1 年間にわたる大規模改修を経て、今年 1 月にリニューアルした大濠公園能楽堂で、700 年を超える歴史を有する日本の伝統芸能「能楽」の、深遠なる世界に触れてみてはいかがでしょうか?
第八回 塩津能の會 九州公演
■日 時:2022年2月19日(土) 13:30開演(12:30開場/16:15終演予定)
■会 場:大濠公園能楽堂(福岡市中央区大濠公園 1-5)
■演 目:おはなし(塩津圭介)/舞囃子「邯鄲」(塩津哲生)/狂言「寝音曲」(野村万禄)/能「湯谷」(塩津圭介)
■入場料:正面特別指定席:10,000 円/正面(指定席):7,000 円/脇正面(指定席):5,000 円/中正面(指定席):4,000 円/正面(自由席):6,000 円/脇正面(自由席):4,000 円/中正面(自由席):3,000 円
■予約・購入方法
[1] インターネットで予約 喜多能楽堂ホームページ(こちら)より
[2] 電話で予約 専用ダイヤル 03-3491-8813
(受付時間 10:00~18:00/定休あり)より
■公式サイト http://www.shiotsu-noh.com/
■お問い合わせ先 塩津能の會 事務局(TEL:03-3330-6803)
【あらすじ】
邯鄲(かんたん)
時は三国時代、中国の蜀(しょく)という国に住む盧生(ろせい)という男がいました。仏道に入ることもなくただ日々を過ごしていた彼は、そんな自らの人生に悩んでいました。ある日、盧生は自身の生き方について考えるべく、尊い高僧がいるという羊飛山へ向かい、その旅の途中で邯鄲(かんたん)という里に辿り着きます。
日中歩き回っていた盧生は、今晩、この土地で宿を取ろうと決めます。そこで見つけた宿の女主人に旅の目的を話すと、彼女は、昔この宿に泊まった仙術使いが置いていったという、不思議な邯鄲の枕を、盧生に差し出します。なんと、この枕を使って眠ると、自身の未来について悟ることができるというのです。そこで、女主人が粟のご飯を準備する少しの間、盧生はもののためしに邯鄲の枕でひと眠りすることにしました。
しばらくして、楚(そ)の国(くに)の勅使(ちょくし)を名乗る男の声で盧生は目覚めます。勅使曰く、盧生は帝位を譲り受けたというのです。盧生は状況を飲み込めないまま、神輿に乗せられ宮殿へ連れていかれてしまいます。その道中で浴びた人々の皇帝を称える声や、宮殿の煌びやかな情景に盧生は圧倒されます。
そんな優美な生活を送る彼は、果たして、自分の進むべき道を悟ることが出来るのでしょうか。舞囃子とは、シテ一人が面・装束をつけずに、紋服・袴のままで、最も面白い部分だけを演じる、いわば、能のダイジェスト版といえます。今回の演目では、盧生が在位五十年の祝いの席を行っている場面から始まります。宮廷(きゅうてい)舞楽(ぶがく)を模した旋律に乗った、荘重(そうちょう)な舞をお楽しみください。
湯谷(ゆや)
遠江(とおとうみ)の国で池田宿の女主人である湯谷(ゆや)は、現在、京の都で平(たいらの)宗盛(むねもり)に仕えている。故郷に置いてきた母の病状が良くないことを聞き、「母のところへ帰りたい」と休暇を申し入れていますが、「今年の花見までは一緒に」と、宗盛に聞き入れてもらえず、心配な日々を送っていた。
そんなある日のこと、池田宿から使いとして朝顔(あさがお)が、湯谷の母が書いた手紙をもってやってきました。そこには、病状がよくなく、今年の春さえも迎えられないかもしれない、今生(こんじょう)の別れの前に一目会いたい、といったことが書かれていました。一刻(いっこく)の猶予(ゆうよ)もないと思った湯谷は、母からの手紙をもって、宗盛に再度休暇を申し入れに行きます。
しかし、宗盛に聞き入れてはもらえず、さらには清水寺の花見に同行するよう命じられます。花見車の車窓からみえる景色を眺めても、花見を楽しむ人々を見ても、故郷にいる母を想い、なかなか気分が乗りません。宗盛に命じられ、宴の席で舞を舞っていると、通り雨が降り、花が散ってしまいました。これを見た湯谷は、母を思う和歌を一首読み上げます。
その歌は、頑なに休暇を聞き入れなかった宗盛の心を動かし、ようやく故郷へ帰ることが許されました。急いで京の都を発った湯谷ですが、果たして母と再開することができるのでしょうか。この演目には、花見車の作り物が出てきます。想像力を膨らませる一助として、謡や囃子を聞きながら、たくさんの場面展開をお楽しみください。
塩津哲生
1945 年1月 22 日生まれ。能楽シテ方喜多流職分。日本能楽会会員。
1986 年 重要無形文化財(総合指定)
1990 年 国立能楽堂養成課シテ方主任講師を勤める
2006 年 芸術選奨文部科学大臣賞受賞
2007 年 観世寿夫記念能楽賞受賞塩津圭介
1984 年 10 月 27 日生まれ。能楽シテ方喜多流職分、塩津哲生の?男として東京に生まれる。三歳で初舞台を踏み、現在、喜多流能楽師として活動中。1992 年に初シテ(初主役)を勤め、2011 年に若手の登竜門と言われる「猩々乱(しょうじょうみだれ)」を披く。2015 年に能「道成寺(どうじょうじ)」を勤め、独立。(社)能楽協会東京支部会員。十四世六平太記念財団評議員。父塩津哲生師に師事。東京学芸大学 教育学部卒業。APU 立命館アジア太平洋大学非常勤講師。若者の、若者による、若者のための能の催し、「若者能」を企画、出演。フランス、イタリア、アルジェリアなど海外公演にも多数出演。
この情報は2022年1月24日(月)時点の内容です。最新の情報は公式サイトなどにて確認をお願いします。